当館は,奄美群島唯一の総合博物館として昭和62年(1987)7月に開館して以来,奄美群島の自然・歴史・文化を理解するための拠点的施設として活動を続けてきました。
奄美群島の奄美大島・徳之島・沖縄島・西表島の4島は,世界自然遺産の候補地に選定され,令和2年(2020)の登録を目指した取り組みが進められています。平成29年(2017),自然保護に人の暮らしまで視野に入れた「環境文化型」という新概念が加えられた「奄美群島国立公園」が誕生しました。
当館では,こうした情勢を鑑みて,開館から30年以上経過した展示を,その間の調査研究成果を反映させて一新を図り,令和元年(2019)に全面リニューアルを行いました。
奄美の文化は,日本文化を基盤としながらも,琉球国統治時代には琉球文化の影響を受け,薩摩藩統治時代には鹿児島文化の影響も強く受けながら情勢された独特のものです。
奄美と沖縄の歴史は,江戸時代以降から大きく違っており,その歴史の違いが,奄美と沖縄の似て非なる文化を生み出してきました。
令和元年の展示リニューアル事業においては,環境文化概念を根幹に据えて,奄美の自然・歴史・文化の体系的整理を行い,「環境文化博物館」を目指して展示を構成しました。人々の環境利用だけにとらわれがちな環境文化概念に,当館独自の歴史的視点も加えた展示を,奄美と沖縄の違いを意識しながらご覧いただきたいと思います。
【1階】
1階は,海をイメージした博物館の,そして奄美旅の導入空間です。奄美を理解していただくための様々な情報を集めています。「見て」「聞いて」「調べて」「体験して」,奄美に親しんでいただきたいと思います。奄美大島に生息する珍しい生き物の飼育展示も行っています。
【2階】
2階は,里をイメージした奄美の歴史と文化のフロアです。学校の教科書にはほとんど書かれていない奄美の歴史を,最新の研究成果に基づきながら展示しています。また当館が所蔵する貴重な古文書『南島雑話』に描かれた幕末の奄美大島の挿絵と,実際の民具と合わせて紹介しています。触って楽しめる「織り機」と「サトウキビ絞り機」のコーナーがあります。
【3階】
3階は,山をイメージした奄美の自然と暮らしの一年のフロアです。世界自然遺産候補地である奄美大島の自然について,その特徴をわかりやすく展示しています。ジオラマは,奄美の森を体感でき,貴重な動植物の情報を調べることもできます。壁面は,奄美大島に暮らす人々の一年を,自然の移ろいとともに月ごとにまとめて展示しています。さわって楽しめる絵本や『南島雑話』の絵合わせのコーナーもあります。